2022年7月10日日曜日

巨大な悲しみ

私はこれまでにブログなどで政治的なことを書いたことはないし、恐らくこれからも書けないのではないか思う。

それは、政治的無関心という意味ではない。わからない、というのが正直なところである。アートにたずさわる者ならば、わからないなりに表現すべきという向きもあるが、そこまで自分の表現力が熟達していないのであろう。

一昨日、安倍晋三元首相の身に起きたあまりに理不尽で悲しい出来事は、ただただ悲しく、むなしく、憤りを感じる。心からご冥福をお祈り申し上げる。

平時にひとを殺めればもちろん殺人罪であるが、有事に敵を何人殺しても罪になるどころか、英雄視される場合もある。ああ、ますますわからない。なんと愚かな、情けない人間の性であろうか。

昨日は、ウクライナ出身のオペラ歌手、オクサーナ・ステパニュックさんの歌声に接した。素晴らしい声量と超絶技巧に圧倒された。ご本人にも直接お会いして少しお話が出来たが、 彼女のことばの端々には、リサイタルを通じて感じられた「祈り」があった。

アンコールの『アヴェマリア』ピアノ弾き語りでは、客席のあちこちで涙を拭うしぐさの方をお見受けした。

いつの時代にも存在し、くりかえされる巨大な悲しみに、我々市井のものがどう向き合っていけばよいのか、彼女の歌声から、そんなことを考えるヒントを得たような気がした。