2020年8月15日土曜日

Nobody wins

今年で75年。
終戦記念日と聞くと、思い出すことがある。


若くして母を亡くした祖母には、年の離れた弟があった。
まだ中学生だった祖母は、米のとぎ汁をミルク代わりに弟を育てた。
その弟は「特攻隊」に志願し、1945年の5月、沖縄の海に散った。
祖母が、ごくまれに僕にしてくれた話。
今思えば、孫にその話をしながら不条理の塊と対峙していたのであろう。
諦めと怒りを内に秘めたような祖母の悲しみの表情を忘れることができない。

当時校長をしていた祖父は、空襲警報が鳴ると生徒と職員を防空壕などの所定の場所へ避難させたのち、一人校舎にとどまり「奉安殿」を身体を張って守ったそうである。
海軍兵学校へ行った叔父からそんな戦時下の断片的な話を聞いた。しかし、祖父の口からは戦争の話を聞いたことがなかった。

戦後50年を過ぎた頃、私はサンフランシスコ近郊で、自分のCD制作のためレコーディングを行った。
その時、1曲づつのイメージを固めるために、プロデューサーのアメリカ人、スコット・マシューズと多くの時間を共にし、討論した。
ある時、お互いにオフということでプールサイドでくつろぎなら、戦争の話になった。直接曲作りに関係ないけれど、大切なことだと思った。半日以上話し続けたと思う。

その時僕たちが共有した言葉。

Nobody wins.




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