黒電話。
昭和チックなお座布団の上にちゃっかり鎮座しています。
新規導入(笑)されたこの電話。稽古場のこどもたちには、使い方がわからない未知の物体でもありました。
実は、稽古場にはインターネット専用回線のほかにもう1回線引いてあります。いま私たちが日常使っている電話はほとんどがデジタル回線なのですが、黒電話が使う電話回線はアナログ回線。電話回線から電気をもらっているのです。
つまり、電話局からの給電が停止してしまったり、電話回線が切断されてしまったりしない限り、この地区が停電していても電話が使えます。
わざわざアナログ回線を1回線確保しておくなどというのは、一見無駄なようにに見えますが、単なる懐古趣味ではなく(もちろんちょっとしたウケを期待したきもちもありますが(笑))、リニューアルに伴って、従来のコンセントを必要とする電話から黒電話導入に踏み切ったことにはそんな理由があります。
私は10年を経ても、あの日の出来事を忘れることができません。あの日から会えなくなった人が何人もいます。いまだに心が震えます。
真っ暗な仙台中心部。
ひとしきり雪が舞った後、冷え込んだ夜の、ものすごくきれいな星空。
通信手段が絶たれた孤立感と、余震が続く中での不安感。
携帯電話の充電残量の心もとなさ。進まない安否確認。
冷え切った事務所、ローソクの灯で浮かび上がった仲間たちの表情。お金があっても水や食料を買えなかったり…。
私は、未知の物体、黒電話を眺めながら、これを発端に、稽古場や子供たちの家庭で対話が生まれることを、そして、彼らが生きていくうえで、ほんとうに大切なものについて話題が発展してくれることを、妄想していたのでありました。
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