2020年4月22日水曜日

夕暮れの時は

まだ世の中のことなど何一つ知らない中学生の時分に、はじめて堀口大學さんの『夕暮れの時はよい時』という詩を読んだ。
大正と昭和という時代の隔たりがそうさせたのか、ノスタルジックな味わいとともに、年を重ねていくことへの不思議なワクワク感がわいてきたことを今も覚えている。

さて、この2か月ほど、私の生活の中心はすっかり事務所デスクとなり、椅子に張り付いてばかりだが、意外にやることも多い。うっかりすると陽が傾きそうな時間となる。

今日もそうだ。
ふと思い出し、慌てて野暮用を済ませるべく事務所を飛び出した。


新緑が間近に迫るこの季節。やはり陽はすでに傾きかけていたが、もうすぐ街が新緑の街路樹たちで美しくなることを感じる。
あと半月もすれば一年で最も仙台の街が輝く季節だ。
けれども、令和2年、2020年大型連休直前の今日。ますます世の中がわからなくなっているが、行き交う人々の表情や景色が、私には晩秋のそれのようにうつる。まるで地球の軸が大きくずれたようだ。

せめて、空を見上げて、もうじき最高の青空をバックに若緑色を湛える街路樹たちのことを想像してみよう。
せめて、そんな木々のワクワクを私の身体に取り込もう。
と、思った。

夕ぐれの時はよい時、 かぎりなくやさしいひと時。 
それは季節にかかはらぬ、
(堀口大學)

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