2015年3月28日土曜日

尾行

仙台の桜はもうすぐ咲きそうです。
東北大学片平キャンパスの桜はこんな感じ。


実は、この写真の撮影に至るまでにはちょっとしたストーリーがありました。

年度末の様々な雑事で事務所にこもりっきりだったので、ちょっとでも運動を!という思いもあり、ふらっと散歩に出ました。

いい天気だなぁ、しかし、桜の蕾がうまく撮れそうなポイントはないものかなぁ、と案じていたところ、目の前を一匹の猫が通り過ぎました。


若い猫ではなさそうです。
少し、距離を縮めてよく見ると、ちょっとグリザベラ(ミュージカル・キャッツに出てくるキャラクター)を想起させるような毛並み。


何となく「ついてきな」と言われた気がして、そのグリザベラの後を追うことにしました。
文字通り「尾行」です。


しばらくすると彼女はエアコンの台の下にもぐり休憩に入りました。
少し私を警戒しているようですが、私が静かに話し始めたのをじっと聞いています。
少しづつ、私への警戒心を解いているようでした。
よかった。話をわかってくれて。


どうやら、この辺りを縄張りにしているようです。

「この冬は去年ほどじゃなかったけど、結構雪が降って、食べ物を探すのが大変だったよ」
と言っているような気がしました。

「ここのコンクリートの上、茶色い錆があるでしょ。これを舐めて、ちょっとした鉄分と塩分の補給をするのよ」
などと、地元猫ならではの特産品解説も。


「あ~それにしても今日のような天気の日は気持ちがいいわ。ひなたぼっこは、にゃん族世界共通のレジャーなんだよ」

「ところで、桜の蕾の写真撮りたいんなら、いい場所教えてあげるわよ」

「こっちにきて、この角を曲がるわよ」


「こっちよ」


なんと、ここは友人K氏が居ると思われる研究室の近くじゃないですか。
そうか、K氏にはしばらくご無沙汰していました。
彼女は何か彼に連絡をとれとでも言っているのでしょうか。
再会の約束がうっちゃったままになっていたことを思い出しました。

そして、次の瞬間、角を曲がったところで、彼女を見失いました。
尾行はそこで終了。

しかし、その建物の向こう側に回ると、
いつも散歩で歩く道が広がっているではありませんか。


なんと、そこにある桜の木々は、やさしげなふくらみを湛えた蕾を持っていました。
それが、冒頭の写真です。

灯台下暗し。

あのグリザベラのような猫は、そんなことを教えたかったのかもしれませんね。

不思議な猫でありました。
私も猫目線になって、ふと足もとに目をやると、小指の爪の先ほどの小さな、それでいて誇らしげな紫色の花が、春の空に向かって背伸びをしていたのでした。
目線を変えたり、視点を変えたりすると、いたるところに「発見」は無限にあるものなのですね、グリザベラさん。



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