2015年8月12日水曜日

話題作

いわゆるベストセラーと呼ばれる本は、一呼吸おいてから読み始めるのが常である。
呼吸しすぎて、ついぞ読まないでしまっている本のほうが多いけれど。

一方、若い頃に比べるとTVは全くと言ってよいほど観なくなってしまった。周囲にもそんな人は多い。時代もあるかな。しかしEテレでやっている「オイノコミア」という番組はなぜか時間があると最後まで観てしまう。案内役の又吉直樹さんの雰囲気が良かったからだ。番組内容もさることながら、初めて見たときお名前文字ずらだけだと「マタキチ」と呼んでしまいそうになるところがさらに良かった。これまた、顔が哲学的というか文学的というか、お笑い芸人という感じがしないところも良い。
そんな印象を持っていた又吉さんが書いた作品。この本を、溢れるほどの好奇心の持ち主、梶賀主宰が事務所に、当然のように持ち込んできた。芥川賞受賞作「火花」。この時期であれば「花火」と呼んでしまいそうなところが魅力的なタイトル。


ちょういと拝借して、スタッフよりも先に読み始めた。これほど、作者の声や表情が字面から浮かび上がってくるような本は久しぶりである。何か近所のお兄ちゃんが上梓しちゃった本という感覚。身近な感じで声が聞こえてくる。TVを先に観てしまっているからだろう。しかし、内容は確かに文学の薫りが高く、かつ面白い。又吉さんの柔軟な思考と発想、そして人間とそれを取り巻く環境に対してのすぐれた観察力は、圧倒的なものを感じた。
呼吸しすぎて、この本をうっちゃっておくことにならず、良かった。


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