3日ほど前の公演当日の朝、まだ静かな劇場前の道ををしばらく歩いてみました。
秋の日の
ヸオロンの
ためいきの
身にしみて
ひたぶるに
うら悲し。
『落葉』ポオル・ヹルレエヌ(上田敏訳)より
毎年紅葉の終わりごろの景色に出会う度、不思議とヴェルレーヌの『落葉』の一節が浮かんできます。
しかし、 記憶のなかでは、たぶん小学校6年生ぐらいの時に初めて目にしたこの詩のイメージと、当時マセガキの私が好きな詩人のひとりだった北原白秋の詩の印象がどうしてもだぶってしまっています。おそらく「ヴィオロン」という言葉の響きが、訳も分からず読んでいた『邪宗門』の印象と同質のものと思い込んでいたのでしょう。確かに「ヴィオロン」という単語が出てきますから。バイオリンではなくヴィオロンというところを妙に粋に感じた少年時代を思い出すとともに、時々、詩人たちの言葉が記憶の中で混じってしまうことがあります。
それにしても若いころに触れた言葉は、ずいぶんとしっかり染み入るものですね。今頃になって、もっとたくさんの言葉に触れておくべきだったと、少々後悔じみた思いにとらわれます。いや、年を重ねたものだけが感じることができる特別な感覚なのだと、脳内でポジティブに変換しておきましょう。
今は「青空文庫」などで、上田敏や北原白秋の文体に触れることができ、記憶があいまいだった詩の一節もすぐに確認することができたりして、とても便利になったと感じる反面、紙をめくるという作業にまだまだ愛着を感じています。
しかしながら、やはり、秋はページをめくる感触のなかで過ごしたいと、あらためて思う今日この頃。
みなさま、天気予報によると、明日は「この季節一番の冷え込み」となるそうな。
秋の夜長は何する人ぞ。風邪などお召しになりませぬよう。
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