雷が数回轟き、急にあたりが暗くなった。
窓から外を眺めると、道ゆく自動車もヘッドライトを点灯して走行している。
雨の降り方で、なんとなく梅雨の終わりが近いことを感じる。
早朝、自宅マンションのドアの前にカナブンがあおむけになっていた。
かすかに頭を動かしているので、 手を差し伸べたが、もう私の指につかまる力も無いらしい。
元気を出せとしばらく話しかけて、最後は多分このカナブンにとって少し楽であろう姿勢にしてあげて家を出た。
用事を済ませ暫くして戻ってみると、ちょうど少し陽が射して気温が上がったせいか、文字どり「虫の息」であったカナブンが(いつまたひっくりがえっちまったのか)起き上がろうとかなり活発に足を動かしている。
再び声掛けして指を差し伸べると、つかまろうとするのだが、どうもうまくいかない。よく見ると、後ろ足が全く動かなくて起き上がれないらしい。
コンクリートの上ではあとはこのまま死を待つばかり。仮にこれが彼(彼女?)の寿命だとしてもコンクリートの上じゃちょいと切ない。
そこで私は彼(彼女?)をそっと手のひらに乗せ、マンション1階へ降りて、外の緑と土のあるところへ移してやった。
自然界のものに手を加えるのは極力避けたいところだが、このぐらいはよしとしよう。大体にしてマンションのようなコンクリートの塊はもともと自然にはなくて、カナブンにとっちゃ人間がつくった不自然至極迷惑千万な代物であろうから。こっちが申し訳ない。
本日はカナブンと共にマンションを出たのちに出社した。
毎年、夏が近づくと、こんなふうにコンクリートの上でひっくりかえる蝉や甲虫たちと出会う。今日のようにたまたま目が合ってしまった場合、彼らが助けを求めて現れたように感じてしまい、一応声をかけることにしている。
昆虫が苦手な方はゲゲゲと思うかもしれないが、私も決して彼らが大好きというわけではない。もちろん蚊やハエは大嫌い。中でも「蛾」は、どうも話が通じそうになくて全く手出しが出来ない。若者風の言葉づかいでいえば「絶対無理」。
しかし「一寸の虫にも五分の魂」である。
どんな虫でも何かしらのお役目を帯びているに違いない。
生きてるものはみな尊ばれるべきもの。
土砂降り雨が上がると、先程の暗さが嘘のように辺りはまた明るくなった。
雨に洗われた街路樹の緑に光が当たると、この季節独特の緑の輝きを放つ。
その緑色をみて、また連想した。
こんな天気が繰り返され、蒸し暑くなる夕刻には、
美しい緑と透き通る水の流れるあの山あいで、
ホタルの乱舞を観ることが出来る、
に違いない、と。
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