2015年10月11日日曜日

SCS正指導員とキーツの詩

SCSミュージカル研究所のお稽古場では、主宰の梶賀センセが執筆や出張などで不在となる時もあります。
そんな日の稽古場を覗きに行くと、ちょうどひとつのクラスの区切りの時間でした。指導員が研究生にアドバイスや事務連絡を行っています。


実は、今月からSCSミュージカル研究所では、女性3名男性1名、計4名の「正指導員」を任命しました。全員SCSで10年以上の舞台経験を持ち、かつ梶賀センセから実力と指導力を認められた者たちです。
「正指導員」という名称を用いるのはSCS25年の歴史の中では、初めてのこと。文字通り梶賀センセと藤田センセの右腕として稽古プログラムや舞台作品作りをサポートしていきます。

SCSのレッスンでは、年齢による区別ではなく、舞台経験の数、レパートリー数などにより、重層的な指導プログラムが組まれます。公演活動を軸とする指導プログラムが特色ですが、これまでにプロの舞台人を育てる場としてSCSを運営したことはありません。
創立の理念については、別の機会に譲るといたしまして、結果的に数多くのプロフェッショナル舞台人を育て続けている梶賀センセの教育方法そのものを、組織的に表現していこうとする試みが始まっていることは事実であります。
それは、ひょっとするとこの「正指導員」を核とする若い才能たちが中心となり「梶賀メソッド」のようなかたちで、あっという間に現実のものとなるやもしれません。

一方、稽古場は魂を磨き、美しさを追求していく神聖なる場所です。

そんなことを想いながら、稽古場でみんなの様子を見ていると…ある一節が浮かんできました!

A thing of beauty is a joy for ever.

(John Keats: "From Endymion")

唐突ですみません。キーツの有名な一節(告白すれば、学生時代私の専攻はキーツの時代の詩でした)です。
不肖ヒロセ純、近頃昔読んだ本のフレーズを突然思い出すことが多いのです。きっと年を取ったせいでしょう(笑)
小生のブログ読者には、小学生もいるので、ちょっと訳してみましょう。
重ねて唐突ですが、これを直訳するのも味気ないので、日本国東北地方ののこのあたりの言葉で訳してみましょう、

「うづぐしいごとつぁほいづはいづま~でもたのしいってごどなのっしゃ」

あはは。ひらがなにすると難解な言葉にみえます。

因みに上記のひらがな訳、厳密にいえば「ほいづは」に対応する単語は原文にありません。かつ標準語にはない発音、独特のイントネーションやストレスは、文字だけでは表現しきれません。
けれども、東北弁には、どこか相手を思いやる、相手に考える隙を与えるような優し気な「間」というか、たゆたうような間が、会話の中に一瞬現れるときがあります。 (ネイティブが上の訳を発音するとそうなるはずです)
こんな東北弁を、英語やフランス語、ドイツ語などに変換できるようになる、しなやかな「感性」が、これからの日本の若者が持ってくれたら素敵なことです。

インターネットが益々一般化し世界中のインフラが整備されれつつある今、今日稽古場に居た彼らの舞台は、地球そのものとなりましょう。
そうしたなかで「真の国際人」の条件は、母国のことを母国語でしっかり説明できる、というところから生まれるのではないでしょうか。況や舞台人を哉であります。

奇しくも正指導員が任命されたのは10月1日。
25年目のSCSミュージカル研究所創立記念日でありました。

たくさんの、たくさんの方々に支えられながら、
稽古場におけるあらたな四半世紀の始動です。

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