一方、事務所では当日のパンフレットが刷り上りました。
Fくんがつくってくれました。
おかげさまでチケットは完売。
しっかり準備をしてお客さまを迎えなければ。
さて、そのパンフを作り終えたばかりのFくんに、演出家から、作品の中で「寅さん」風のカバンが必要と突然言い渡されてしまいました。舞台人にとって、演出家の言葉は絶対です。別の言い方をすれば演出家の思い付きほど恐ろしいものはありません。たった一言で莫大な費用がかかることもあります。
渦中のF君、パンフレットの作業が終わると、事務所や倉庫をごそごそ探し回っていましたが、しかし、どこにもそれっぽいカバンはありません。時計を見ると、F君には、衣裳や小道具を劇場に搬入する仕事が迫っています。
言い渡した本人の梶賀さんも「米沢に持ってる人がいるけど、もう間に合わない」などと、言いだしっぺ本人が諦めムード。
しかし、なんということでしょう。さっき衣裳搬入用のクルマを取りに行ったFくんが、寅さん風のイデタチで戻ってきました。
手には何と、こんなカバン。
聞けば、通り道にあった古道具屋で見つけたとのこと。
2千円也。
でかしたね、Fくん。さらにびっくりは、中には「日本国有鉄道」発行の旅のしおり、未使用のエアーメイル封筒が入っていました。
旅のしおりをパラパラ覗いてみると、「電化完了」とか「電気列車」などという文字があちこちに。
相当くたびれているものの、「このカバンは、これまでにどこをどんなふうに 旅してきたのだろう?」などと、渦中のFくんをよそに僕の妄想は膨らみます。
でも、はっきり言える事は、
このカバン、長い旅の末に、明日スポットライトを浴びることになります。
元の持ち主さん、あなたの旅のお供は、
みんなを楽しませるお役目を担いましたよ。
カバンは復活しますよ。
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