昨日は午後から七ヶ浜に出かけていた。
ミュージシャンの山本隆太さんが「被災ピアノ」を使って、録音をするというので録音エンジニアとして参画したためだ。といっても録音は本職ではないので、あくまでボランティアである。
ところで、このピアノのもともとの持ち主は七ヶ浜国際村ミュージカルグループNaNa5931の音楽指導員でSCSメンバーでもあるピアノ教師の鈴木由美さんだ。彼女の実家は七ヶ浜町。実家のピアノはあの日、津波で流された。被災地に置き去りにされていたこのグランドピアノを復活させたのは、シンガーソングライターのMetis(メティス)さん。
その様子は、下記のURLでも紹介されている。
http://www.youtube.com/watch?v=kCCM1XHnhz0
一方、以前からコンサート活動などで七ヶ浜町に縁のあった山本さんは、七ヶ浜への思いがつまった自作曲をこのピアノを使って録音し、国際村パフォーマンスカンパニー(七ヶ浜の子供たち)と一緒に残したいと考えた。
そこで、国際村職員の皆さんとカンパニーのプロデューサーである私は、その録音作業に協力しようということになったわけである。
まず最初にピアノが置かれている中央公民館で録音がはじまった。
ピアノの音を録り終えたころ、そばに停めた車の向こうに太陽が沈んでいくのが見えた。
こうなると、気になってしょうがない。
すぐに東のほうに走ってみると、案の定、お月さんが顔を出していた。
中央公民館の隣は、仮設住宅が立ち並んでいる。
その駐車場の上のほうに、まだ暗くなりきらぬ空をバックに、月は美しくかがやいていた。
「中秋の名月」などと言われ、出てくるのをみんなに注目されていたからか、恥ずかしそうに赤みがかった月からは、音楽が流れてきそうに感じられた。
さて、あらかた山本さんのピアノを録り終えると、我々は公民館から七ヶ浜国際村に場所を移し、まずはミュージカルグループ「NaNa5931」のコーラス入れとなった。
続いて、パーカッショングループ「Groove7」によるジャンベ演奏の録音を行った。
録音は、もちろん集中して行ったが、どうしても気になったお月さんを見に、ちょっとだけ国際村の屋上へ登って撮影したのが、冒頭の写真である。
山本さんはとても真摯に音楽を通じて、被災地と向き合ってくれている。
私もそのお手伝いをほんの少しだけできたことが嬉しく感じた月夜であった。
あれから、三度目の秋。
仙台に戻る車のフロントガラス越しに月を眺めながら、 普段はあまり聴かないショパンのノクターンを大音量で聴いた。
消えない震災の記憶と、震災後に出会った人たちとのあったかいやり取りを思い出しながら。
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