10日ほど前にね、「常長の祈り」ってミュージカルをやったんだ。
あかねちゃんが慕っていた梶賀センセの書いた台本で、音楽を上田さんが作って、僕は常長の役を仰せつかったんだよ。
劇中の「常長の祈り」ってアリアは、タイトル曲ってこともあって、上田さんが自らピアノを弾いて、僕に表現の個人レッスンをしてくださった。
あかねちゃんも通ったSCS稽古場のピアノの上には、今も君の写真が飾ってあってね、上田さんはそれを見ながら、目を赤くして、僕以外にも誰かに問いかけるようにピアノを弾いていたんだ。
僕は、その時、
歌うって、どんなことなのか、
少しだけわかった気がしたよ。
そして、県民会館でいよいよゲネプロが始まるとき、僕はみんなに、あかねちゃんも一緒に舞台に立つって、話したんだ。きっとみんなを守ってくれるってね。
おかげで強行日程にもかかわらず、事故もなく幕を降ろすことが出来たよ。
ありがとう。
しかし、なんであかねちゃんの初舞台の前の日に津波の馬鹿野郎が来ちまったんだ。
ああ、1000日経っても言葉にならない。
だから、僕たちは、あかねちゃんが楽しみにしていた、こどもたちと一緒につくっていく舞台を、これからもずっと準備し続けるんだ。
そうそう、ところで、たけちゃん。
今回は、奥さんと息子さんが劇場にきてくださったよ。きっと、たけちゃんが野球部の監督やってた歌津中学校の阿部校長先生がご案内くださったのでしょう。
たけちゃん、あなたはまだ何処にいるのか分からないけれど、大きくなった息子さんは、たけちゃんによく似ていて、僕は劇場であなたに会ったような気がします。
そして、たけちゃん、舞台の上の阿部先生、見えました?
あなたをはじめ、きっとあの日から会えなくなった人たちにも見えるようにと、きっとそんな思いでおられたのではないでしょうか。
身体全体をつかって初挑戦のミュージカルの舞台を見事に務めてくださいました。
阿部先生は、心臓の大手術をしておられるにも関わらず、お稽古も皆勤。
そのお姿は、生き残った私たちがどう生きれば良いのかを、命がけで諭して下さっているようでもありました。
それからたけちゃん、奥さんが、劇場を後にされる時、梶賀センセに「アワビ送りますね!」と言って下さいました。
ビックリしたのは、翌日にそのアワビだ届いたこと。相変わらず細やかな心配りをなさる美しい奥様ですね。
そうかぁ、気がつけば、あれからもう南三陸は、3度目のアワビの季節なんですね。
そんなことを思いつつ、さっそく、行きつけのすけぞうってお店に出かけました。親方のすけさんに無理をお願いして特別に、刺身や酒蒸し、リゾットなどつくってもらい、アワビ尽くしの素敵な時間を頂きました。
美味しい味とともに、僕の心には、懐かしいたけちゃんのビック・スマイルが浮かんできていましたよ。
以上、近況報告でした。
たけちゃんも、あかねちゃんも、会えなくなっただけで、
3.11以前より、ぐっと近くにいるように感じる夜。
…そうだね、
しっかり、楽しく
「生」を全うしなくちゃね。
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