おんなだけで演じられる「マクベス」(シェイクスピア作)をはじめて観た。
昨日の午後のことである。
場所は仙台市内にある10box(テンボックス)。
それは、東北学院大学教養学部言語文化学科の下館ゼミ、卒業公演。
実は、このゼミには、下館和巳(しもだてかずみ)教授の誘いで1年半前から私も関わっていた。
最初は教授の「温泉に行こう!」という誘いからはじまった下館ゼミとの関わり。昨日のパンフレットではいつの間にか小生は「芸術顧問」ということになっていた。(えっ?浅学の私めが…ジョークかと思ったが、20年以上兄貴と慕っている教授の決めたことには逆らえず)
そんな芸術顧問(やっぱ恥ずかしい!)は、この日の上演に向けて、2年間がんばってきたゼミ生たちの節目節目に、頻繁にではないが、彼女たちへのアドバイスやエールを送ってきた。
何しろ演劇経験の無い学生がシェイクスピア劇を翻訳、脚本作成からはじめて、上演までやり遂げるのであるから、大変な努力が要求されるゼミである。
しかし、彼女たちはやってのけた。
自分たちで考え抜いたオリジナリティも溶け込ませた見事な内容であったと思う。
終演後、お客様の前で教授のお礼の言葉があったとき、彼女たちの目にはうっすらと美しいものが光っていた。さわやかな千穐楽である。
普通なら、これで「おつかれさま、おめでとー!」 で終了するのであるが、下館教授のすごさはさらにここから。
自宅にゼミ生全員を招待!
特別に調達したマグロを自ら握り!
3日前から仕込んだ特製スープでラーメンを振舞う。
これがまた超絶うまい!
それにしても、今年のゼミ卒業生は全員女性。さらに、教授のお子様3人も全員女の子。にぎやかである。すごいパワーである。同席させて頂いた明治大学の宇野毅教授と小生は、そんなくのいちパワーを薄めるためにこの場にお招きに預かったのでは、とちらりと思った。何しろ実はシャイな一面を持つ下館兄貴であるから。
「ラーメン食べ終わった順に味のコメントと、今日の舞台のコメントを各自行うように!」「あ、ラーメンの毒見はうちの娘たちが行います」と、教授の指示が出る。部屋中に美味しい香りと笑いと涙が溢れる。下館教授はこんな風にして、 学生にも、自分の娘たちにも、彼女たちの記憶に残る教育をしているのであろう。
彼が学生や娘たちを本気で叱る場面も見たことがあるが、それがすべて愛情であることがはっきりと証明される時間でも合った。
マグロの握りも、ラーメンも、決してお金で買うことは出来ない。しかも食べれば消えてしまう。
けれども、 彼女たちにとって、昨夜のあったかい味とぬくもりは、一生残るに違いない。
学者としての尊敬は勿論のこと、こうしたことを自然体でやってのける彼に、ひとりの人間としてのとてつもない大きさを見た夜であった。
今頃、天国でハルコ夫人も「カズさんらしいわね」と、微笑んでいるにちがいない。
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