年齢のせいとは思いたくないが
時折り眠れなくなる時はあるものだ
そんな時は慌てずに
好きなだけ考え事をする
ふと寝室から西の方角を眺める
あの小高い山、麓に眠る同郷のサムライ
ぼくのA10神経が記憶を未来へと連れ出す
空を見上げて
感じる
宇宙の寝息に耳を傾ける
大気圏という薄い皮膜で覆われた
母なるこの星は
何億年も変わらず
一定のエネルギーが循環している
ここで生を受けたということは
すなわち死を意味するのだ
うまれることは
死へのカウントダウンがはじまるということ
循環の過程にあること
どうせそうならば
生は諦めてやり過ごすか
否
カウントダウンのスピードは
誰にもわからない
ゆえに
死を気にせず
最期まで生を謳歌すべきがそのさだめ
きみがうまれたとき
きみの親がそう想ったやうに
生を享けた者の気にすべきは
現世
でもなく
来世
でもなく
後世
である
明日も生きると仮定する
きみの
未来
である
きみはぼくより先に
さよならを言ってはいけない
ぼくでは役不足かもしれないけれど
どうしても役に立ちたい
カウントダウンのスピードを
同じく感じていたい
いまこの時代できみと出会ったこと
ただそのことを
たいせつに抱きしめて
ぼくはやがて
さまざまな元素となり
循環のストリームに身を委ねよう
あのきらきらした
星のまたたきも
何億光年も過去からやってきて
きみのひとみに輝いているのだ
きみが生の証明だ
かなしいことも
つらいことも
君は今まで
それらすべてを
しあわせのエネルギーとして
担保してきたのだ
きみの全ての細胞と記憶の集積回路には
こんなつまらない僕なぞとは比較にならぬ
はるかに膨大で
清らかなエネルギーが充電されているのだ
きみはぼくより先に
さよならを言ってはいけない
眠るように
必ず訪れるものだから
慌てる必要はない
ほら
やっと眠くなってきた
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