2019年3月31日日曜日

舞台袖より

思いがけず雪模様となった仙台。
にもかかわらず、ミュージカルの上演会場となったエルパーク仙台には、満席の回も出るほど多くのお客さまにおいで頂きました。

出演者たちと過ごす時間は、毎回異次元に居るような感じがします。
劇場を出るまで、会場にいらっしゃるお客さまからの情報で外は結構雪が降っていることを知りました。
容赦なく幕が開く時間の迫る中、余計なことを考えなくなる自分に出会います。
舞台袖では、次の場面のために集中している様子の子供たち。
ステキな瞬間です。


『忘れたい忘れない』本日は11時と15時の2回公演。
出演者スタッフ一同皆さまのお越しを心よりお待ちしております。


2019年3月26日火曜日

待つ

「待つ」という意味の熟語にはなぜが「秋」が使われるんだろうなぁ、と常々考えていました。恐らく待ち続けて季節が移って秋になってしまったという感じが込められているのでしょう。一日千秋、一刻千秋などのほか、一日三秋(いちじつさんしゅう) という熟語があることも最近になって知りました。
しかし、私はいつも「春」が待ち遠しい。

散歩しながら、そんなことを考えていました。すると東北大学の片平キャンパスの紅梅が満開に。


桜はもう少しかな?


私が、桜のつぼみに見惚れていたら、近くを通りかかった紳士が「もう少しですかねぇ」と声をかけてくれました。私が「この辺りじゃ、(開花は)この木が一番早いですよねぇ」と返すと、彼は笑顔で「そうですね、この木が一番早い」と。
たったそれだけの会話ですが、気が付くと二人とも笑顔になっていました。

笑うという字はもともと咲くという字だったなどと聞いたことがあります。
まさに(笑)

本格的な仙台の春までもうしばらく待ちましょう。
そして、桜が笑ったら、またレポートいたしましょう。


2019年3月21日木曜日

満月

めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 
雲がくれにし 夜半の月かな


七ヶ浜で見た満月に
私がまだ幼いころ
母が百人一首を詠んでくれた声
かるた取りに興じた時間
妹や従兄妹たちが集った茶の間が
一瞬思い浮かびました

お彼岸だからかな?


2019年3月20日水曜日

メルローちゃん

年に何度か税理士法人事務所を訪ねます。
昨日も月例の会計監査を兼ねて、弊社顧問税理士のT先生とお昼をご一緒しました。
弊社は今月が決算月。それだけではなく、実は今回T先生の事務所にニューフェイスが登場!という情報を得て、その彼女との面会も重要な用件のひとつでありました。

その彼女とは…


生後4か月のメルローちゃん!
この子に逢うために、猫好きの梶賀センセと社員K君が同行したことは言うまでもありません。 幸い、私にもすぐになついて遊んでくれたりしたので、会計監査が終わった後のとても良い癒しの時間となりました。

癒しといえば、その帰り道(と言えなくもない)我々3人が 立ち寄ったのはここ。


かっぱは居ませんでしたが、心身ともに癒されて帰途につきましたとさ。

忙裡偸閑。



2019年3月14日木曜日

桜の花をめぐって

先週の土日は、七ヶ浜町のミュージカルグループNaNa5931の鎌倉公演に同行していました。3.11ALL鎌倉実行委員会様のお招きによるもので、市長さんはじめ多くの鎌倉の皆さん、そして近隣都県の皆さまにも鎌倉芸術館でミュージカル『ゴーヘ』をご覧いただき、翌日の野外イベントではアトラクションに参加させていただきました。
鎌倉の皆さまの暖かいお気持ちに大いに勇気づけられた2日間でした。

その野外のアトラクションが行われた鎌倉市役所前では、満開の桜の木を見つけ、「え!、もうこちらでは桜が咲いているんだぁ~!」と皆で感動しました。後にその桜の木は鎌倉生まれ鎌倉育ちで早咲きの品種「玉 縄 桜(たまなわざくら) 」という桜だったと教えていただきました。


そんなこともあったせいか、 昨日はふと思い立って東北大学片平キャンパスを散歩してみました。


それはまだ硬いつぼみでしたが、朝日を浴びて嬉しそうにも見えました。確実に開花に向かって成長しています。冬のあいだは、まったくその気配すらなく、まるで枯れているようにも見える枝だったのですが、まさに神秘の力!
この後は、きっと見事な花をつけてくれるに違いありません。ある意味「秘せずは花なるべからず」ですね。私の大好きな桜の季節です。
そして、その後は仙台が一番美しく見える新緑の季節へと向かいます。

一方、今月30日と31日に上演するSCS公演『忘れたい忘れない』のチラシに描かれているのは桜の花ですが、これは、東日本大震災から1カ月ほどした頃に、七ヶ浜町の海岸近くで見つけた桜です。恐らく町の方から津波で流されてきた桜の大木。松林で引っかかり、根っこは天を向いていたのに、それでもそこで花を咲かせていました。その桜の木にとって生涯最後の花です。


最後の最期まであきらめず生命を繋ごうとする姿に、当時私は涙を抑えつつ、せめて写真にと思いカメラに収めました。翌年はその花をモチーフに梶賀先生に台本を書いてもらい『sakura』というタイトルでミュージカルの舞台もつくりました。

今回は、その写真の桜をイラストにしていただき、チラシに載せました。
あの年以来、突然被災者となり、被災地に居る私たちは、様々な哀しみや希望の入り混じった複雑な想いを胸に、この3月を過ごします。

2019年3月12日火曜日

After 3.11

今日は3月12日。
8年前の今日は、SCSのお稽古場に通うキッズクラスのあかねちゃんが、初舞台を踏む日でありました。そのはずでした。
ミュージカルが大好きなあかねちゃんは、初舞台を楽しみにしていました。
まだ9才でした。 3月11日に起きたあの地震のあと、中学生のお兄ちゃんと一緒に避難所へと向かう途中津波が。

どんなにか恐ろしかったでしょう。
どんなにか痛かったでしょう。
どんなにか冷たかったでしょう。
どんなにか苦しかったでしょう。

昨日は、稽古場に居合わせたみんなが地震の時刻に合わせて黙とうをささげてくれたそうです。私は同じ時間に七ヶ浜町の追悼式に出席し黙とうしました。

毎年、3.11がめぐってくるたびに、全国で様々な催し物や報道が行われます。
全国からのご支援に私たちはどれほど助けて頂いたことか。感謝の気持ちが湧いてきます。
でも、僕らにとってほんとうにつらかったのは、地震翌日の3.12から。
地震の当日は、電気、水道、ガスはストップ。道路は渋滞。一体どこで何が起こっているのかよくわからなかったからです。仕事ももちろんストップ。

あかねちゃんが見つかったのは、地震から2週間経ったときのこと。
その近くからはお兄ちゃんも見つかったそうです。

僕たちも被災し地震後数日は動けませんでしたが、様々なご支援により、自分たちの水と最低限源の食料を確保すると、友人やNPOなどと連携し、かつてミュージカルの指導で通った歌津町(現南三陸町)や七ヶ浜町へと連日支援活動に入りました。

写真は地震から10日目にやっと水や食料を届けに行くことができた南三陸町歌津地区にある伊里前(いさとまえ)小学校の様子です。奥に見える体育館では、梶賀千鶴子先生を筆頭にSCS指導員が、かつて10年以上にわたり、子どもたちとミュージカルの練習に励みました。懐かしい場所です。
しかし、高台にある小学校の校庭にまで津波は押し寄せ、なぎ倒された時計は地震で揺れている時刻で止まったままでした。


何度か支援活動に入り、支援物資を運んだりするなか、避難所である方に「あの時の小学生ミュージカル発表会のビデオ、廣瀬さんの事務所にありますか?」と尋ねられました。大事な思い出のものも全て流されてしまったと。
その時私は、自分たちが仕事としてしてきていることの重大性をあらためて感じたのでありました。津波によって町は失われても、記憶の中の美しい町と子供たちの声は色あせず、それはその方が立ち上げる勇気、生きる勇気に直結していたのです。

After 3.11。
私たちは3.11に、あの地震の瞬間を思うのではなく、そこから始まった数週間、数か月、数年をイメージして、今を生きなくてはと、近年強く思います。
あの日から会えなくなった仲間たちの分まで、生かして頂いている意味を考えます。


2019年3月3日日曜日

書道。
幼いころの話であるが、いわゆる「お習字」の教室に通っていた。
確か小学1年生から5年生ぐらいまで。
5年生には剣道を始めていたから、多分その頃に「お習字」をやめたのであろう。
お習字の先生の名前は太田先生。美しく上品な雰囲気の方であったことを覚えている。しかし正直なところ、当時、虫とりやザリガニ釣りなど外遊びに夢中な私は、なかなか「お習字」は好きにはなれず(課題に対して練習しその成果として毎回3枚の清書を先生に提出しなければならないのだけれど)3枚書いてそれを清書として提出してお教室を出てきてしまったこともしばしば。つまり半紙を3枚しか使っていない。
だが太田先生は、練習しないで清書としたものをすぐ見抜かれて、時々それを「差し戻し」された。そして私はしぶしぶ書き直した。たいていそんな日は親に内緒でお習字のあとに友達と遊ぶ約束などをしていたから、差し戻しされたところで気もそぞろ。
しかし太田先生はそれも見抜いておられて「こころを落ち着けてお清書したら、遊びに行ってらっしゃい」とおっしゃられた。
「見抜かれている」というバツの悪さと、「赦していただいている」という安心感。子どもながらにそんな奥の深い不思議な感情を得たことを覚えている。

さて、昨日は東北学院大学教養学部設置30周年の記念祝賀会のお手伝いをさせていただいた。私の役割は、前半アトラクションの進行と、最後に校歌を歌うお役目。
私の役割はさておき、写真は、その前半アトラクションのなかで尺八の演奏とコラボレーションされた書家の後藤歩さんによる「飛翔」という文字。


青い色は、学校のイメージと空のイメージが重ねられているのか、その上をまさに飛翔するように文字が躍動している。
後藤さんの揮毫を拝見しながら、私は、ふと幼いころの「書」にまつわる不思議な感情を思い出していた。



2019年3月2日土曜日

土曜と日曜には

私の仕事には基本的に休日がない。毎日が休日のようなくせにと仰るむきがあることをあえて否定はしないけれども(笑)、土日も基本的には出社する。
そして、お昼ごろにはオフィスのあるビルの地下にあるお稽古場から誰かがまるで郵便屋さんのように「本日のリーディングマラソン提出分です」と、ノートやファイルを何冊か私の机に持って来てくれる。


このブログでも以前に書いたかもしれないが、SCSミュージカル研究所では「リーディングマラソン」と称して、SCSミュージカル研究所の研究生に稽古場でのお稽古以外の読書を奨励し、その量に応じ年末にささやかながら役員たちからお褒めをいただく取り組みをおこなっている。

まだ文字の書けない未就学の研究生などは、読んでもらった絵本などをもとにお絵かきして持って来てくれてもOK,それ以外は原則として読んだ本に自分なりに200文字以上で感想を書いてきてくれた人をカウントして集計する。

感想文には、ひとつひとつ私も短いコメントを書くのであるが、これがまた楽しく、かつ自分自身の修行にもなっている。
なぜなら、パソコンをよく使うようになってから、手を使って紙に文字を書くことが、なかでも漢字をどんどん書けなくなってきていることを実感しているからだ。簡単な漢字を書けない時などは、自分の記憶力の劣化を痛感する。(結局、書けない漢字を確認するために再びパソコンに向かう私が居るのであるが…)
しかしながら、それ以上に大切なのは、コメントや絵を書いてくれた研究生たちの感想に毎週感動させられることである。
毎回みずみずしい感想や表現を発見できる、そういう時間を頂けていることに感謝のきもちが湧いてくるのである。