2020年11月21日土曜日

コーラスライン

『A Chorus Line』。1975年、ブロードウェイで初演。1979年に劇団四季により日本初演が実現した作品です。

ブロードウェイで大ヒットしたこの作品の日本初演が劇団四季により実現した際、梶賀千鶴子先生(現SCSミュージカル研究所芸術監督)は、劇団四季の文芸部に在籍し、故浅利慶太先生の日本版演出の演出補として活躍しています。

当時、梶賀先生は日本版を作るにあたり、ニューヨークに渡り『コーラスライン』の作・演出・振付を担った故マイケルベネット氏から、同作の振付や演出の直接指導を受けたそうです。そして帰国の際は衣裳の一部(最後の場面のタキシード風衣裳)とともに劇団四季に持ち帰ってきたとのことでした。先生の話によると、マイケル・ベネットさんの指導は大変緻密なもので、文字通り「LINE」に関しては特に厳しい注文があったそうです。ご自宅にうかがった時には、ほとんどが鏡張りの独特のお部屋に驚いたとか。そこで、マイケルさんに鏡張りの理由を尋ねたところ「このほうが(鏡張りの部屋が)落ち着くんだ」と、おっしゃったそうです。そういえば『コーラスライン』では、鏡を大胆に使った演出が有名ですね。

さて、今週はその『コーラスライン』日本版の仙台公演初日。梶賀先生と共にお招きいただきしっかりと堪能させて戴きました。個人的にこの作品は、舞台でも映画でも何度も観ていますが、全てにおいて大変質の高い作品であることはもちろん、シンプルな舞台装置は、観るたびに何か我々舞台制作者の核心を刺激させられるような思いがいたします。


今回の公演では入場時の検温、消毒はもちろん、劇場を出る際には密を避けた座席指定の退場となるなど、入退場の際の感染防止対策にも安心感がありました。
さらに(それはいつもの光景ではあるのですが)終演後、劇団四季の会長、社長、役員のみなさんが、最後の一人のお客さまが劇場を後にされるまで頭を下げて御礼を言ってお見送りされておられました。
このコロナ禍における舞台公演。即ち仙台の地に質の高い舞台を持ってきてくださるのは並大抵の努力ではなかったであろうと容易に想像できます。
しかし、役員、スタッフの皆さんが総出で公演を支えるその姿に、劇団四季の皆さんの並々ならぬ決意と共に、演劇に対する情熱的でかつ真摯な取り組みがいつにも増して伝わってくる印象的な場面でした。

私も大いに勇気づけられ、我々も何としてもこのコロナ禍を乗り越えなければ、と勇気が湧いてくるような公演でありました。




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