2016年9月2日金曜日

見えないものを見せる

先週、市村正親さんの一人芝居『市村座』を観劇する機会がありました。
しかも、最前列で!
当然、おひねりを用意して(笑)、いそいそと定禅寺通りへと出かけました。


市村さんの一人芝居を初めて拝見したのは、もう何年前かも忘れてしまいましたが、確か銀座で上演されていた『クリスマス・キャロル』。その時の、「一体一人で何役やるんだろう!」と仰天した思い出はは未だに鮮烈。初めて私が「眠らずに観た一人芝居」でした。

今回は、ネタが輸入ものじゃなくて、すべてオリジナルかつ新作で構成されていると聞いていて、益々楽しみにしておりました。いよいよ芝居が始まると、相変わらずのしなやかな身体から繰り出される、極上のエンターテイメントと呼ぶべき場面の数々に圧倒されっぱなし。生演奏のバンドの皆さんとの一体感もあいまって、心地よいテンポの進行。あっという間の二幕芝居。

なかでも、印象的だったのは、数え切れない一流舞台を経験しておられる市村さんならではの「見えないものを見せる」演技力。指の先はもちろん、ひょっとして、まつ毛の先まで神経があるのではと思わせるほどの迫力ある表現。
独り芝居ですから、当然、他の登場人物の様子や、時間の経過、風景をも演劇的に表現していきます。 気が付けば、市村さんを観ているのだけれど、本当にそこに、話している相手やその他の登場人物が居るように見えてくるのでした。「名人芸」と言う言葉がありますが、まさにこれのことだと思う瞬間が何度もありました。

そのほか、とにかく歌でも芝居でも、ちょっとしたダンスでも、確実にお客を惹きつける。面白さの連続、そして諧謔味。何度、声を出して笑ってしまったことか。そして、最後の最後に『NINAGAWAマクベス』に触れたコメントと、歌。これは、泣けました。

芝居は、こうでなくちゃねぇ。


市村正親さんには、過去に2度、梶賀千鶴子主宰が書き下ろしたSCSミュージカル作品にも「伊達政宗の声」役として、声の出演協力を頂いています。舞台以外での市村さんは、舞台同様エネルギッシュで明るい雰囲気。今や巨匠であるのに、後輩にまで細かく気を使ってくださるような優しい方。そして、震災後の我々や東北の事も、本当に気にしてくださっていました。
そんな市村さん、いつか再び、東北におけるミュージカルづくりでご一緒させて頂ける機会があればなぁ…などと妄想は膨らむ今日のの頃であります。


追記:市村正親さんは、来月から放送予定のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」に靴職人・麻田茂男役で出演されるそうです。


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