2014年8月6日水曜日

漱石先生を想っていた

仙台の七夕初日予想最高気温は35度。
気持ちだけでも涼しくなりたくて、コーンウォールで過ごした雨の一日を思い出してみた。

先週金曜の朝、起きてバルコニーの外に目を遣ると、滞在先の庭を雨が包むように濡らしているのが見えた。
気温は恐らく20度前後。
曇天は少し陰鬱な気分も醸し出すが、芝生の緑は喜んでいるように見える。


イギリスで触れる雨は、何だか優しい。
近頃の日本のゲリラ何とかとは違う。屋内で靴を脱がない生活様式も関係しているのだろうけれど、この雨はさほど邪魔な感じがしない。イギリスの人たちがあまり傘をさすことが無いのも頷ける。

その日は、和巳さん(下館和巳教授)と「場の力、場の精神」について語り合っていた。
つまり「その土地に脈々と存在しているDNA」「来てみで、そこで感じねぇどわがんねっちゃねぇ」…みたいな。

そして、思い出していたのが、明治の時代に英国留学した夏目漱石先生のある文節のこと。え〜と、英国の陰鬱なイメージから、ある種の力強さに変わっていくような文章を昔読んだような…

今の時代、便利なもので遠い昔に読んだ本の微かな記憶で検索すると、ネット上でそのフレーズが直ぐに見つかる。

そのとき、私が反芻したかったのはまさにこの文脈。

(以下引用)

今まではまったく他人本位で、根のない萍(うきぐさ)のように、そこいらをでたらめにただよっていたから、駄目であったということにようやく気がついたのです。
(中略)
私はこの自己本位という言葉を自分の手に握ってからたいへん強くなりました。彼ら何者ぞやと気概が出ました。
(中略)
その時私の不安はまったく消えました。私は軽快な心をもって陰鬱なロンドンを眺めたのです。

(夏目漱石『私の個人主義』より)



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