2016年2月10日水曜日

無伴奏

「無伴奏が閉店しちゃたんだってよ」
と、友人に聞かされたのは、確か私が20歳の頃。

かつて仙台にあったその伝説的な喫茶店に、初めて足を踏み入れたのは19歳のときだった。
やたら学業成績の良い、バロック音楽好きの友人の勧めで。
本を小脇に抱えて、アーケードから少し入ったところの階段を下りて。
実のところ、その頃ロックやフォークばかり聞いていた私は、単に「音楽通」を気取りたかっただけの、偽バロック愛好家だった。


たしかその近くに「とまと」だったかな、レストランがあって、そこのサラダが大盛だったから、月に1度ぐらい、レストラン→無伴奏というルートが、当時の贅沢だった。

しかし、ついぞ無伴奏に「彼女と二人で入る」ようなことはなかった。

思い出の、苦きコーヒー。


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