2014年10月27日月曜日

泣けた、そして想った~ウエストエンドの断片(8)

ブロードウェイ・ミュージカルの有名な作品は、ロンドンで初演されたものが多い。
この夏にロンドンのナショナルシアターで観た「War Horse」という作品。


2007年にロンドンで初演。2011年のトニー賞5部門受賞。そしてこの夏は東京の渋谷でも同作品をやっていた。
「すごくいい作品」「泣けるらしい」…そんな噂はあちこちで耳にしていた。

今や、観たい作品はネットで検索するとほとんど事前に情報を得ることができる。
しかし今回 War Hose は、劇場窓口の当日券での入場。したがって、それまでに耳にしたウワサ以外の情報は持ち合わせていなかった。言ってみれば、ナショナルシアターのでかい看板にひかれた、思い付き。

それ故、ほとんど事前情報なしに客席に座った私は、舞台の馬を見たとき「ふ~ん、馬の人形か、ちょっと動きが本物っぽいな」程度にしか、感じなかった。

しかし!
1幕を終えたときには、私の涙腺は崩壊し、
2幕を終えたときには、しばらく席を立てなかった。
まるで生きている馬が舞台上に出現していたかのような錯覚。

作品の詳細はここでは触れないが、元来、動物ものにはめっぽう弱い私のツボにはまった。
もちろん、それだけではなく、何しろトニー賞5部門受賞作品。圧倒的な貫録と安定感があった。
後に知ったのだが、かのスピルバーグ監督もこの作品の1幕目を終えたときには号泣していたとか。(その後、彼の手により映画化)

涙には、ヒーリングや浄化作用があるのだそうだ。
私もあの時、何かを浄化していたのかもしれない。

完全に作者、役者、プロダクションの手中にはまってしまった。
全面降伏。
それはもうシェイクスピアの時代から、感動を発振する原石はロンドンで生まれ、ブロードウェイやハリウッドで研磨され世界中に響き渡る。
そうした原石は無条件に人の心を動かし、ひいてはそれぞれの芸術作品が象徴に「時代」を形成していくものである。

翻って、
日本において感動を発振する原石は生まれうるか…。
発信ではない。それ自体が発振するような原石。

ロンドンの劇場街で、日本よりも低く感じる青空を見上げた。


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