2014年11月16日日曜日

オペラ座の怪人~ウエストエンドの断片(9)

この「ウエストエンドの断片」という拙い記事もこれで9回目です。年内にはもうひとつ、10回目を記して、シリーズの区切りといたしましょうか。
あまり引っ張っても「昨日の新聞」のようになりますゆえ。

実のところ、この夏の英国の旅の一番の目標は「何もしない」ということでありました。「何もしない」という響きは何かから逃げているようにも聞こえますね(笑)しかしそれは、我々の日常から考えるとほぼ不可能なこと。恐らく、現地に行けばそんなわけにはいかないってことはわかっていたけれど、何だか和巳さんも僕もそんな、日常をうっちゃってしまうような憧れと、ちょっと脱力したような感覚が心地よいと感じていたのかもしれません。

さて、そんなことを言いながらも、旅も終わりに近づいた頃、僕たち2人の父と4人の娘はミュージカルを観ることにしました。倫敦はウエストエンドのハー・マジェスティ劇場、あの夏目漱石も英国留学中にこの劇場を訪れているのだそうです。The phantom of the Opera (オペラ座の怪人)。この劇場ではもうかれこれ28年も同じ演目が上演され続けているのです。すんごいロングラン公演ですね。



外観も客席も、品格と劇場の歴史を感じる建築物です。



「ロンドンでミュージカルを観る」というイベントは当初の目的から言ってもそれ程プライオリティは高くありませんでした。しかし、子どもたちにホンモノの劇場の雰囲気は一度味わって欲しいとは思っていましたから、結果として子供たちの学校を終えてからの時間に計画。「行き当たりバッチリ」で、和巳さんが、全員分のとても良い席を確保してくださいました。


子どもたちは、初めて観る劇場の重厚さに、当初圧倒されていたようにも見えましたが「あのシャンデリアが落っこってくるのかなぁ」などと、客席に座るなり、ワクワクしてる様子が感じられました。
オーケストラのチューニングの音とともにそのワクワク感はさらに昂まっているようでした。


フィナーレで子どもたちは、誰に教わるでもなく自らスタンディングオベーションをしていました。その姿は、多少なりとも舞台の世界にいる我々親父2人にとって、ちょっぴり涙腺を刺激されるような、嬉しい瞬間でした。和巳さんもシェイクスピアカンパニーのHP内にあるブログでその事に触れておられます。
ふと、オペラ座の怪人というミュージカルを、ニューヨークとバンクーバーでも観ていたことを思い出しました。しかし、そのどれよりも、そして12年前に同じハー・マジェスティ劇場で観たオペラ座の怪人よりも、あらゆる面で、今回のPhantomは好印象でした。

「これを観なきゃ!」という意気込みが全く無く、ロンドンやケンブリッジに滞在しながら、何となく土地の空気に溶け込むような感じで行動したことが功を奏したのかもしれません。いろいろと考えたり感じたりすることが沢山ありました。

ロングラン公演というものは、日々作品や役者を熟成させかつ進化させていくものなのかもしれません。
いや、そうでなければならないのでしょう。
ゆえに、今回も劇場は満席でありました。

何もしないはずの英国でしたが、ロンドンやケンブリッジでは観劇はもちろん、沢山の方々にお会いしました。
もう一度観たい、もう一度お逢いしたい、そんな気持ちが募ります。舞台や文学作品はもちろんのこと、英国での沢山の方々との出逢いも私にとって、今や煌めく宝物であります。




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