2015年2月5日木曜日

失われた風景~パンドラの匣

いつだったか、津波で失われた町を模型で復元するプロジェクトを観に行った。
その時、その模型を観ながら、かつての景色を知っている者にとっての懐かしさとともに、涙があふれ出る直前の、あの独特の感覚が沸き起こっていた。それは、決して不快な感情ではないが、何だか悲しみを帯びたココロの深い部分がよみがえってくるような感覚であった。

日常においては、自分から進んでそうした感情に浸ることはない。ところが、先日映画作品について調べているとき、 ふとしたきっかけで「そういえば、SCSがエキストラで協力して、南三陸町でロケした映画があったなぁ」と、思い出した。撮影は確か2009年のことである。
さらに、一昨日の「おとなクラス」の稽古場で、東北大学名誉教授の松野豊先生が、レッスン終了後の雑談の中で「あの映画撮影の時は、何の抵抗もなく正座が出来ていたのになぁ」とおっしゃっていた。松野先生は、先月満85歳になられたが、毎週稽古場に通ってこられ、1999年に入所以来レッスンを欠かさない。キャリア15年以上の現役SCSミュージカル俳優である。
そうだ、松野先生もエキストラで出演された、あの映画、また観てみよう!
そう思い、得意のアマゾンで検索してみた。すると、あるではないか、DVDが。
タイトルは「パンドラの匣」


監督・脚本/冨永昌敬
原作/太宰治「パンドラの匣」(新潮文庫刊)
出演/染谷将太、川上未映子、仲里依紗、窪塚洋介、ふかわりょう、洞口依子、ミッキー・カーチスほか
配給/東京テアトル
上映時間/1時間34分

劇場では何度か観ているが、DVDは持っていなかった。
先ほど届いたので早速観てみた。
何度観てもいい映画だ。

SCS関係者は8名ほどエキストラ出演している。

そこで、再び件の感情がよみがえってきた。
南三陸町でのロケの際は、私も何度か現場に通い、張り付いたりしていたので、感慨深い映像が殆どだ。
最も多く、映像に出てくる木造の建築物(健康道場)は、かつて南三陸町にあった小学校。今は津波に流されてしまって、影もかたちもなくなっている。映像を観ながら、いくつかの記憶をつなぎ合わせ、失われた風景のジオラマを頭の中に作成している自分がいた。作品に対しては正しい鑑賞法でないことは承知の上、今の自分の正直な感情に従った。
仙台や七ヶ浜でも助監督さんらとエキストラのオーディションやブッキングの打合せをしたことが思い出される。震災直後は、南三陸町志津川地区の、かつてのロケ地を通るたびに「ここでロケしたっけな」と、思い出していたが、映像を観ようという積極的な気持ちにはなれずにいた。

松野先生が思い出してくださったこともきっかけとなり、今日は映画の中にある失われた風景をもう一度観てみる気になった。
冒頭の言葉にできないようなココロの振動を覚えつつも、少しずつ、少しずつ、私の中で何かが癒えてきているのかもしれない。



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